アカペラ用機材の使い方 – 音作りのキホンのキ

アカペラ用の機材と言えば、マイクの他にミキサーやスピーカー、パワーアンプなどたくさんの種類があり、いざ機材を組み終えてもどんな調整をすればよいのかよくわからないですよね。
細かく調整しようと思うと非常に専門的な領域でもあり、プロの技術を身につけるには、長い時間と経験が必要です。
本記事では、アカペラ初心者向け「PA機材を使った音作りの基本的な考え方」をご紹介します。

アカペラ初心者向けの解説です。より高度なチューニングのテクニックについては、実際の音を聞きながら、プロPAさんに聞くなど試行錯誤が必要です。
音作りの基本手順
機材から音を出す前に、ひとつ注意していただきたいことがあります。
それは、はじめは音量をあげないこと。
はじめて音を出すときには、マイクが拾う音のレベルがどの程度になっているか、パワーアンプの増幅レベルがどうなっているかがわかりません。
ハウリングなどを防ぐため、まずはとにかく小さな音になるようにしておき、きちんと確認しながら、少しずつ音を大きくしていくようにしてください。
電源を入れる順番も注意です。最初にゲインとフェーダーを下げた状態で、ミキサーの電源をオンにする。次に、パワーアンプ(増幅のメモリは小さめに設定)→マイク、という順番で電源をいれるようにしてください。
急に大きな音が出ないことが確認できてから、だんだんとゲインやフェーダーで音量をあげていって、きちんと音が出るかどうかを確認するようにしましょう。機材が故障してしまっては、元も子もありません。
まず音量を揃える
音が出ることが確認できたら、いよいよアカペラを歌うための音作りです。
まずはミキサーを使って、それぞれのマイクの音量を均一にします。最初はフェーダーはすべて0の目盛りがあたりに設定しておいてください 。出力のレベルを揃えておくためです。
一番下まで下げているのは0ではなくマイナスの値です。真ん中から少し上あたりに、0の目盛りがあるはずです。確認してください。
フェーダーの目盛りが0だと大きすぎる場合は、もう少し下げても構いません。大切なのは、出力のレベルを合わせた状態でゲインの調節をすることです。
マイクは長く使っていると、音を上手く拾わなくなってきます。そうでなくても、マイクは性能によって微妙にばらつきがあるものなので、ミキサーの「ゲイン」を使って、マイクにどのくらいの音を拾わせるかを調節する必要があります。
やり方を説明します。まず誰か一人に1本のマイクから声を出してもらいます。歌っているときと同じくらいの音量で声を出してもらうようにして、適切な音量になるようゲインを調節します。この時の音量が他のマイクの音量調節の基準になります。
次に別のマイクでも、同じくらいの音量で声を出してもらいます。このとき、歌う側は同じ音量でも、スピーカーから出る音量が違う場合があります。その場合は「ゲイン」のつまみを操作して同じくらいになるように調整してください。
音が大きければ、ゲインは下げる。逆に小さければ、ゲインを上げます。
この作業を繰り返し、すべてのマイクから同じくらいの音量の音が出るように調整してください。はじめに、ゲインの調節をして、すべてのマイクが同じくらいの音量で鳴るように調整しましょう。
ベースの調整
全体のマイクのゲインが調整できたら、続いてベース用マイクの音を調整します。
歌い手によって異なりますが、低い音をよく拾ってもらうように、「Low」あるいは「MidLow」を少しだけ上げてあげます。
あまりあげすぎると、ぼわぼわした音になってしまうので注意です。
Lowを調整していないのにぼわぼわしている、もっとクリアな音、はっきりした音にしたい場合は、
- 「High」を少し上げる
- フェーダーをやや下げた状態で、ゲインを少し上げる
を試してみてください。両方合わせ技で使う場合もあります。
本来高音域を調整するための「High」ですが、ベースに関しても少し上げてあげることで全体のもわもわ感が緩和される場合があります。
2つ目のフェーダーとゲインの調整については、それぞれの役割を整理するとイメージがつきやすいでしょう。
ゲインは音の”入る量”を調整し、フェーダーは音が”出る量”を調整するためのものです。
少ししか水が貯まっていない状態でいくら蛇口を捻っても、勢いの強い水は流れませんよね。これがゲインが低い状態で、フェーダーをあげている状態。
逆に水がたくさん貯まっている状態で蛇口を捻るとたくさんの水が流れます。その状態で蛇口の口を指で少し狭めるとどうなるでしょうか。
ホースで花壇に水をやるときのように、水の勢いは強くなりますよね。これがゲインが高く、フェーダーが下がっている状態です。
好みや歌い手、全体のバランスによりますが、ベースとパーカッションは、音質として少し固い音の方がかっこよく聞こえます。
フェーダーを下げた状態でゲインを少し上げてあげると、圧力のかかった固い音になりますので、かっこよく聞こえるようになります。
やりすぎは注意ですが、一度試してみてください。
パーカッションの調整
パーカッションは、基本”ドンシャリ”で調整するのが良いと思います。
“ドンシャリ”というのは、LowとHighが高く、Midがやや下げられた状態のことで、”Low=ドン”と”High=シャリ”が強調されていることからこう呼ばれています。
とはいえ、人によってはMidを下げてしまうと、きちんとスネアドラムが鳴らなくなってしまうこともあります。
実際に筆者は、ハイハットとバスドラムはマイクがきちんと拾ってくれるので、むしろLowは落としてMidをあげてもらっています。スネアドラムをきちんと持ち上げてほしいからです。
ある程度高低差をクリアにする必要はあると思いますが、音色に正解はありません。自分のイメージする音に近づけるように試行錯誤してみましょう。
コーラスの調整
ベースとパーカッションの調整が終わったら最後にコーラスです。リバーヴの強さを調整します。
カラオケのマイクでも、声に”ホワンホワンホワン”という音響効果がつきますよね、あれがリバーヴです。
機材によっては、色んな種類のリバーヴを選ぶことが出来ます。音の反響の仕方によって名前がついているのです。(例:鉄板リバーヴ、ホールリバーヴなど)
リバーヴをかけると、音が柔らかくなり、奥行きが出ると言われています。コーラスは、他のパートよりも少~しだけ強めにリバーヴをかけ、遠くから鳴っているような印象を演出しましょう。
ベースとパーカッションは、リバーヴをかけすぎると音が溶けすぎてしまうので注意です。コーラスが一番強く、次はリード、ベースとパーカッションは薄めにリバーヴをかけるようにしましょう。
理想はすべてフラットな状態
ここまでパート毎に音作りの考え方をご紹介してきましたが、最終的な音作りの理想の状態、それはすべてが無調整のフラットな状態です。
ベースやパーカッションも、きちんと自分にあったマイクを選び、かつ自分の出したい音をきちんと生声で出せるようにトレーニングすることで、PAに頼らない音作りが可能です。
生声のハーモニーと機材を通したハーモニーは、別物と言えば別物かもしれません。しかし、大切なのは、自分達がどんなハーモニー、どんな音楽を作りたいかを考え、それを表現できる実力を身に付けることです。
それに近づくためには、機材の使い方ももちろん大切ですが、それに加えてきちんと自分の体をコントロールして、表現したい音を表現するスキルを身に付けることだと思います。
人によっては、音を小さくするにはマイクを離せば良いという人もいますが、個人的には小さな音でもきちんと歌える筋力とテクニックを身に付ける方がいいんじゃないかなと思います。
物事はバランスが大切です。機材のことをきちんと学んで使いこなしつつ、仮に機材の力を借りなくても、高い音楽性を表現できるよう努力していきましょう。
まとめ
いかがでしたか。機材のこと、少しでもご理解いただけたでしょうか。
それでは、本記事のまとめです。
- まずはマイクのゲインを揃える
- ベース&パーカッションは個別に調整、コーラスはリバーヴをかける
- 理想はすべてフラット。大切なのは、生声で調整出来るよう訓練すること。
ぜひ機材の繋ぎかた・使い方を覚えて、ライブハウスだけでなく、野外のイベントなど様々な場面でアカペラライブを楽しんでもらえればと思います。
また、機材の使い方を覚えた次のステップとして、本番で100%の力を出しきれるよう、普段からマイクに慣れておくように心がけてみてはいかがでしょうか。
マイクを使った演奏では、通常では聞こえていない音が聞こえてしまうので、上手く使わないと下手になったように聞こえる場合があります。
本番では機材を使うのに、練習では使わないなんてもったいないですよね。自分にあったマイクを選ぶとともに、とにかく機材を使って練習しましょう。
>関連記事:アカペラ用のマイクはどれがいい? – ボーカルマイクの基本的な選び方
アカペラ用機材のつなぎ方については、こちらの記事をご覧ください。
>関連記事:アカペラ用機材の使い方 – マイク・スピーカーの繋ぎ方
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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