「ボイパは指揮者」加入4年目で気づいたその真意とは

こんにちは、しげです!
皆さんは、ボイパの役割について、考えたことはありますか?
この記事では、しげがアカペラグループ”ぷっちだる”に加入してから、試行錯誤の末たどり着いたボイパが担うべき役割、メンバーとの音楽的な関わり方について、珍しく、超真面目に考えてみたいと思います。
ぷっちだる(公式サイトより引用)
関西中心に活動する男声6人の総合エンターテイメントグループ。同じ大学を卒業した5人が、高崎だるま市で再会したことをきっかけに結成。2012年、Kと運命的に出会い今に至ります。だるま落としを得意としています。大統一理論に基づき、今宵も世界平和のために歌います。
聞き手:しげ、話し手:しげの自作自演でお送りします。
目次
合唱では指揮者がグループをまとめる。では、アカペラは…?
──ぷっちだるでは、加入してすぐに「ボイパとはなんぞや?リズムとはなんぞや?」を、改めて問われたそうですね?
学生時代からアカペラサークルで活動していて、一時期プロの方に教えてもらっていた時期もありました。
自分なりに、パーカッションはこんな感じでやっていくもの、というイメージがあったはずなんですが、いざ面と向かってハッキリ聞かれると、全く答えられなかったのを覚えています。
──その時は、パーカッションの役割をどう考えていたのでしょう?
あくまで音楽の本質的な部分は、リード、コーラス、ベースが担っていて、パーカッションは不要なものだと。
だからこそ、邪魔しない、前に出ない、それでいて派手さやノスタルジーをプラスオンさせていくパート、演出に徹するべき存在がパーカッションというパートだと思っていました。
──パーカッションが不要なものだなんて、パーカッションパートの人が言うとは思いませんでした
そうですよね笑
実際、自分でそう思うようになってから、アカペラをやめようと思ったことも何度もありましたし、やめたいと思いながらステージに立ち続けていた時期もありました。
ただ今思うと、北村嘉一郎さんなんかは世界で活躍されていますし、装飾品で終わっているはずがないんですよね。
仮に装飾品だったとしても、例えばクリスマスツリーは装飾品自体がメインで、装飾品=不要ではない。でないと、クリスマスツリーはただのもみの樹ということになってしまいます。
当時はそれに気が付かないで、自分は不要な存在なんだと、勝手に自分を追い込んでいたのかもしれないですね。
──なるほど。その後ぷっちだるに加入して、パーカッションの役割について、考え方は変わりましたか?
変わりました。
まずぷっちだるで言われたのは、合唱では指揮者がグループをまとめるが、アカペラではボイパがまとめるんだ、ボイパは指揮者なんだ、ということを言われましたね。
──ボイパは指揮者、ですか
はい。これは今でもお酒を飲むと必ず言われます。いい合唱を聴いて、刺激を受けて、あの指揮者よかったねーなんて話をすると、着地はいつも「アカペラではあれをやるのはボイパやで!」ですね。
正直、プレッシャーでしかないです笑
ぷっちだるには、学生時代から指揮者をやっている歴戦の覇者が3人もいますから。
”指揮者”とは、人々を動かす人
──そう言われても、前に出て指揮を振るわけにもいかないですよね?
もちろんそうです。なので、ぷっちだるに加入してから、何度か合唱の公演にお邪魔させていただいて、とにかく指揮者が何をやってるかを観察しました。
どう振ってるかっていう技術的なものではなく、指揮者という存在がなんのためにあるのか、あの人たちが何を考えて指揮を振ってるのかを知りたくて。
──面白いですね、で、わかりました?
いえ、全く笑
仕方ないので、色んなことを調べました。例えば、指揮者の定義ってご存知です?
──指揮をする人?
wikipediaの”指揮者の役割”のページによると、
音楽的表現全体を考えて音程・音量・音色・奏法や歌唱法・パートの音量バランス・テンポ等を指導し、ミスやずれを修正して、演奏の完成度を上げていく。
引用元:wikipedia 指揮者
とあります。
この定義は一見正しいですが、不十分な気がしました。
確かに指揮者には、練習において演奏の完成度を上げる役目もありますし、本番では前に立ちます。しかし、これでは指導者と指揮者の違いを表現できていません。極端に言うと、パートリーダーとどう違うのか非常に不明瞭です。
パートリーダーと指揮者に明確な役割の違いがあることは、感覚的にご納得いただけるかと思います。
──なるほど
では、そもそも”指揮”とは何をすることをいうのでしょうか。
Googleで「指揮 定義」と調べると、以下のような定義がヒットします。
全体の行動の統一のため、命令して人々を動かすこと。さしず。「ーをとる」
指揮には、全体の行動を統一するという大目的があるんですね。これでやっとパートリーダーとの違いが見えてきました。
パートリーダーは、確かに演奏の完成度を高めますが、行動を統一させるために本番で指示を出したりはしません。
──こちらのほうが、私たちがイメージする指揮者に近いですね
そうなんです。つまり、合唱・音楽における指揮者を定義するとすれば「演奏の完成度を高め、全体の音楽性を統一し、命令して人々を動かす人」といえそうだな、と。
ここまで来てようやく「え、じゃあぷっちだるに、どう歌うか指示を出せってこと?」という重大なミッションを課されていることに気がつきました。
”指揮者の役割”を整理すると、2つに集約される
──指揮者の定義については少しわかったような気がします。一方で、アカペラでは、アレンジャーの意見が強い場合もあって、一概に指示を出すパートとは言い切れない気もしますが…
僕は一切気にしません。
──え?
気にしません。だって、練習してるうちに、そのアレンジャーがどう歌ってほしいかのすりあわせは終わっているし、当日の指示だしは僕の仕事なので、それは責任をもって自分が担うべきです。
アレンジした人しか、そのアレンジのことをわかってない時点でどうなの?って思いますね。
──アレンジの理解は全員共通認識で持っておいて、現場の指揮はボイパが担う、と
そうですね。それに、指示を出すと言っても、突き詰めると出すべき指示って、2つしかないんですよ。
──2つですか?
本質的な役割は、「タイミングを合わせる」「表現の方向性を合わせる」この2つに集約されます。
①タイミングを合わせる
──カウントを取る人、ということでしょうか?
そうですね…厳密には、音の鳴り始め以外の音の変わり目、伸ばす長さ、切れる瞬間など、他のタイミング全部にカウントを出してます。
──曲中にもカウントを出すんですか?
そうです。実際には、声に出してカウントするわけにはいかないので、スネアやバスドラ、オープンハイハットで代用するわけですが、
例えば、今からサビに入るよ、盛り上がるよ、という時には、1・2・せーのっ!サビ!!!!と、他メンバーが入りやすいように叩き方を少しシンプルにしてあげたり、音量を上げてあげたりします。
このへんにも気を配ってあげるのが大事ですね。
②表現の方向性を合わせる
──表現の方向性についてはどうでしょうか?
一言でいうと、ここから盛り上がるのか、盛り下がるのか、ステイなのかを指示する、以上!ですね。
──も、もう少し詳しくお願いします
アカペラに限らず、音楽では曲の中に抑揚があります。だんだん盛り上がったり、だんだん落ち着いたり。どこまで盛り上がるか、どこまで落ち着けるかの幅もあります。
そのあたりを、練習の中でメンバーとすり合わせておいて、本番で調整していく、というイメージです。
──とはいえ、ボイパで盛り上がり方を指示するのって、具体的にどうするんでしょうか?
これに関しては、僕もまだ研究中なので明確にはお答えできませんが、一つあるとすれば煽る意識ですね。
──煽る意識?
はい。歌っているときに、ボイパから具体的にこう歌ってって指示を出すことはできませんので、僕はここもっと盛り上げたいです!!ってメンバーに伝わるように、音量や音質で、多少浮くくらいでもハッキリ出します。
メンバーとの信頼関係によるところも大きいと思いますが、きちんとパーカッションを聞いてくれていて、それに合わせる技術のあるメンバーであれば、言葉にしなくても自然にクレッシェンドがかかったり、リタルダンドで終わったりできます。
たまに別のグループで同じことをすると、練習と違うことしないでくれる?みたいな顔をされる時もありますが、まぁそれもまた一興かなって思って、懲りずに毎回やってますね笑
ボイパは指揮者、その真意とは
──少し長くなったので、一度まとめます。
- 指揮者は、演奏の完成度を高め、全体の音楽性を統一し、命令して人々を動かす人
- その役割は「タイミング」「表現の方向性」を合わせることに集約される
- ボイパも本質的には同じ役割を担う
ありがとうございます、そういうことです。
──最後に、今後の活動についてお聞かせください
そもそも「ボイパは指揮者」について、今の僕なりの解は出しましたが、これが正解かどうかはわかりません。
ぷっちだるが合唱畑出身だからこそ、指揮者という存在を強く意識したんだと思っています。
なので、これはこれで一つの僕の武器としつつ、より多くの人とアカペラを楽しめる、そして、多くの人に楽しんでもらえるアカペラを創れるような新しい技術を身に付けていきたいなと思っています。
最近ニューヨークでブロードウェイを観てきたんですが、そこで観たヒップホップが、まぁかっこよくって!
そういう、いわば他業種から刺激をもらってアカペラに持ち込んで、アカペラに触れたことがない人にも「これ面白いね!」って言ってもらえるようなエンターテイメントを目指していきたいですね。
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今回は、しげのボイパ観についてまとめてみました。
自分のボイパが伸び悩んでるなって思う方、一度考え方を変えてチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
ここまでお読みいただきありがとうございました。