【アカペラコラム】音楽とは静寂への挑戦である

僕はぷっちだるに加入してからたくさんのことを教えてもらった。
ぷっちだるとは…
しげが所属する男声アカペラグループ。アニソンやゴスペラーズなどのカバー、オリジナル曲を歌う6人グループ。
大切なのはビジョン、ボイパは指揮者、フレーズ感のあるパーカッション etc…
概念的なことも多く、本当に理解出来てるのか、未だにわからないことも多い。
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ある日の飲み会、
いつものごとく、アニメと合唱の話で盛り上がる中、メンバーの一人が言った。
「しげ、知ってるか。音楽ってな、静寂への挑戦やねん」
聞き間違いかと思った。
日常生活において、静寂という言葉に出会うことなど、そうそうない。
あまりにも突拍子もなく、どんなテーマの話が展開されるかもわからないこの出だし。完全に戸惑い、まさに耳を疑った。
「僕らは静寂に挑戦してるんや」
聞き間違いじゃなかった。
メンバーの語りは、かまわず続く。
「作曲家は、新しい曲を書いては破り、書いては破りを繰り返す。
僕ら音楽家は、静寂に挑戦してるねん」
主語が大きい上に行間があまりにも広いトーク。
ぷっちだるで飲んでいると、主語がどんどん大きくなる傾向にある。主語がというか、気が大きくなるといったほうが正しいかもしれない。
ビルボードでライブをしたいという僕にメンバーは言った。
「しげくん、僕は難しいことはわからないけど、そのビルボードっていうのは東京ドームより大きいんか?」
これくらいザラに大きくなる。
僕はそんなぷっちだるが好きだ。
飲みの席で語る夢くらい大きくないと面白くない。なんて器の大きなグループに入ったんだろうと爆笑したのは記憶に新しい。
時を戻そう。
僕ら音楽家は、静寂に挑戦しているのだ。
もし本当に音が”ある”ほうが優れているのなら、わざわざ自分が書いた楽譜を破る必要はない。
余計な音、余計な楽譜、余計な音楽であれば、そんな音は”ない”ほうがいい。
静寂よりも優れた時間を生み出すために、僕らは音楽で静寂に挑戦している。
「なるほど…」
やった、読み切った、行間を読み切った。
「静寂、すなわち休符。僕らは休符が好き、どれだけ休符を歌えるか。そんな音楽に挑戦したいね」
確かにぷっちだるは歌っているときの練習の他に、いかに休符を演出できるかの練習も多い。
結論、休符の前の歌い方やハモり方を気にすることになるのかもしれないが、
休符に向かって歌ったときと、ただ歌った先に休符があるのとでは大きく異なる。
休符のない音楽は面白くない。常に全員の音がなっているよりも、音を鳴らすところ鳴らさないところ、そのバランスとストーリーが音楽を音楽たらしめる。
休符は休むのでなく音を無くす、まさに静寂を演出するのである。
「休むって漢字が良くないよね」
なるほど、そんなものか。僕はひたすら頷きながら聞いていた。
その後も音楽の話を楽しそうに語るメンバー。
僕はその度に頭の中で行間を読んでは頷き、読んでは頷き、ほとんど口を挟む間がなかった。
もうちょっとわかりやすく話してくれません?という言葉は、きっと言わなくて正解だったと思う。
今回は、静寂の勝ち。
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飲み会では、前半の静寂の話だけをするんですが、ブログ用に書き起こしてみました。
だいぶ前の話ですが、強く印象に残っています。休符の話は、それ以降何度も出ますが、静寂への挑戦というフレーズはこのときだけでした。
言ってることはそのとおりですし、行間は広いけど示唆に富む言葉な気もしないでもない…ですよね?笑
もっとみんな、休符歌っていきましょ!
ここまでお読みいただきありがとうございました。